●会社法ワンポイントノート:準備金の増加と減少
 本当は、「資本金の増加と減少」のノートの中に盛り込むはずだったんですが、資本金のお話だけで9200文字くらいになってしまったためやむなくノートを分割することとしました。 ぶっちゃけ、「準備金の増加と減少」については「資本金の増加と減少」とほぼ同じ内容になっています。 よって、このノートでは基本(?)に立ち返って(??)、あえて「ワンポイント」だけ記述して終わりにしたいと思います。(笑)
1:準備金の減少でも債権者は異議を述べることができますが… 資本金の減少と同じく、準備金の減少に際しても債権者は異議を述べることができます。 そして、異議を述べた債権者がいたときには弁済をするとか担保が…とかいう話も資本金の減少と全く同じです。
 ただし、準備金の減少にあたって、「債権者が異議を述べることが出来ないケース」が存在します
(債権者の異議)第四百四十九条  株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。一  定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。二  前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。(以下略)

ケースその1:「準備金」を減らして、その減らした準備金の全部を「資本金」にする場合 資本金は会社の体力とか規模とか信用力とかを表すバロメータです。ということは、債権者にとって「資本金が増える」ということは歓迎すべき事態だと言えます。 準備金を減少して他のことに消費してしまうと言う場合は、債権者が異議を述べる余地があるでしょうが、
 ○ 準備金を1000万円減らす ↓ ○ 資本金を1000万円増やす
 というのであれば、債権者には全く文句が無いはずです。 そんなことのために文句を言ってくる奴はおそらくモンスターナントカなので(コラ、会社法の規定においても「異議を述べることができない」ことにしています。
 そもそも、資本金の増加についても異議を述べる機会が無いことも併せて確認しておいてください。
ケースその2:「準備金」だけを減らして、その減らした準備金で会社の赤字(欠損)を穴埋めする場合 資本金と同様に準備金もこれを減らして会社の赤字(欠損)の穴埋めに使うことができます。ただし、資本金の場合は「手続きが簡略化されるだけ」で債権者は異議を述べることが出来ました。一方、「準備金」を減らして赤字を穴埋めするような場合は債権者は異議を述べることが出来ません。
 これはなぜでしょうか?
 そもそも、「赤字の補填」とは『債権者のためにする行為』だからです。 赤字がそのまま残っている状態で、会社に債権を持っている人が
・「代金を払ってくれ!」・「貸した金を返してくれ!」
 …と言ってきたらどうでしょうか?会社としては「新たに借金をする」とか「何かを処分(売却)する」とかしてお金を捻出することになるはずです。これは会社の赤字をさらに大きくしたり、会社の営業力を低下させてしまう危険性を孕んでいます。 ところが、「準備金」がひっそりと残っているのであれば、これを取り崩して債権者に弁済をすれば借金をする等するよりは会社にダメージは少ないはずです。また債権者も余計な心配をせずに済みます。 よって、このように「債権者のためにする」行為なので、それに債権者が異議を述べるということはあり得ないはずですし、異議を述べたことでこうした会社の行為に時間的なロスが生じたとすれば、それは他の債権者に対して迷惑を掛けることにも繋がりかねません。 よって、資本金を取り崩して赤字を穴埋めするときと同様の手続きを「準備金」でする場合は、債権者は異議を述べることが出来ないことになっています。
 なお、準備金の減少(増加も)について株主総会で決議をする場合は「普通決議」で足りることとなっています。(309条2項に列挙されていないため)